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NEWS【保存版】不動産相続のトラブルを未然に防ぐ10のポイント

【保存版】不動産相続のトラブルを未然に防ぐ10のポイント

不動産の相続は、家族にとって大きな資産を承継する大切な機会である一方で、親族間のトラブルに発展しやすいデリケートな問題でもあります。特に、物理的に分割しにくい不動産をめぐっては、「誰が住むのか」「評価額はいくらか」「どう分け合うのか」といった点で意見が対立しがちです。

実際、佐賀で不動産相談を数多く手がけてきた弊社にも、相続をきっかけに関係が悪化してしまったご家族からの相談を数多く頂いています。しかし、適切な事前準備と正しい知識があれば、これらのトラブルは未然に防ぐことが可能です。本記事では、不動産相続でよくある争いの事例を交えながら、円満な相続を実現するための10のポイントを、準備段階から専門家との連携まで網羅的に解説します。大切なご家族との関係を損なうことなく、スムーズに不動産を承継するために、ぜひ参考にしてください。

はじめに:なぜ不動産相続でトラブルが起きるのか

不動産相続のトラブルは、その高額性と分割の難しさに根本的な原因があります。現金や預貯金であれば、法定相続分に応じて機械的に分けることができますが、不動産は一つの物件を物理的に切り分けることができません。さらに、居住中の相続人がいたり、思い出の詰まった実家であったりと、感情的な要素も絡んできます。

「争続」という言葉があるように、相続をきっかけに兄弟姉妹の関係が悪化したり、長年口を聞かなくなったりするケースは決して珍しくありません。こうした事態を避けるためには、事前の心構えと具体的な準備が欠かせないといえます。以下で紹介する10のポイントを押さえることで、円満な相続に近づくことができるでしょう。

 

ポイント1:相続人全員で早めに話し合いの場を持つ

相続開始前から家族全員で話し合うことが、トラブル防止の第一歩となります。なぜなら、被相続人(親)が元気なうちに意思を確認し、相続人(子どもたち)の希望や事情を伝え合うことで、認識のズレを最小限に抑えられるからです。

「縁起でもない」と感じる方もいるかもしれませんが、むしろ元気なうちに話し合うからこそ、冷静かつ建設的な議論が可能になります。たとえば、長男が実家に住み続けたい意向があるのか、次男は金銭での相続を希望しているのか、といった情報を事前に共有しておくことで、いざ相続が発生した際の混乱を大幅に減らせます。

また、被相続人自身が「この不動産は長男に継がせたい」「預貯金は平等に分けてほしい」といった希望を明確に伝えることで、相続人間の納得感も高まります。定期的に家族会議の機会を設け、財産状況や将来の計画について情報共有することが望ましいといえるでしょう。

✓ポイント:相続開始前に被相続人を交えた話し合いを定期的に持つことで、相続人全員の認識を統一し、将来的なトラブルの芽を摘むことができます。感情的になりにくいタイミングで率直に意見を交わすことが、円満相続への近道です。

 

ポイント2:被相続人の財産を正確に把握する

遺産分割を公平に進めるためには、財産の全体像を正確に把握することが不可欠です。不動産だけでなく、預貯金、有価証券、生命保険、さらには借入金などのマイナス財産も含めて、すべてをリストアップする必要があります。

具体的には、以下のような項目を「財産目録」としてまとめることが推奨されます。

  • 不動産(土地・建物の所在地、面積、評価額)
  • 預貯金(金融機関名、口座番号、残高)
  • 有価証券(株式、投資信託など)
  • 生命保険金(受取人の確認)
  • 負債(住宅ローン、借入金など)

 

この財産目録を相続人全員で共有することで、透明性が確保され、「隠し財産があるのでは」といった疑念を防ぐことができます。また、相続税の申告にも必要な情報となるため、早めに整理しておくことで後の手続きがスムーズになります。

特に借入金などのマイナス財産を見落とすと、相続後に予想外の負担が発覚してトラブルになるケースもあるため、注意が必要です。

✓ポイント:プラスの財産だけでなくマイナスの財産も含めた財産目録を作成し、相続人全員で共有することが、公平かつ透明性の高い遺産分割を実現する土台となります。また、賃貸中の不動産がある場合などは、その賃料を含めたROA分析などを行って判断していくことになります。そういう提案を弊社は現在行っています。

 

ポイント3:不動産の評価額を正確に把握する

不動産相続において最も揉めやすいのが、評価額の認識の違いです。相続税評価額と市場での時価は異なる場合が多く、この違いが相続人間の不公平感を生む原因となります。

 

相続税評価額と時価の違い
評価方法 特徴 用途

相続税評価額

路線価や固定資産税評価額をベースに算出

相続税の申告

時価(実勢価格)

実際に市場で取引される価格

売却や代償分割の基準

 

相続税評価額(土地)は、路線価方式または倍率方式で算定されます。路線価は地価公示価格の約80%を目途に設定されますが、実際の取引価格(時価)との乖離は地域・形状・需給などで異なり、固定の割合で語ることはできません。売却や代償分割の基準として”時価”を用いる場合は、不動産鑑定士等の客観的評価を検討することが必要です。

特に共有不動産の場合、持分割合の評価がトラブルの元になりやすい傾向があります。「兄は80%、弟は20%」といった持分がある場合、その評価方法について相続人全員が納得できる根拠を示すことが重要です。

✓ポイント:相続税評価額と時価の違いを理解し、必要に応じて不動産鑑定士による客観的な評価を取得することで、相続人間の認識のズレを防ぎ、公平な遺産分割を実現できます。

出典:令和7年分の路線価等について|国税庁 https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/rosenka/index.htm

 

ポイント4:遺言書を作成する

遺言書は、被相続人の意思を明確にする最も有効な手段です。法定相続分と異なる分け方をしたい場合や、特定の相続人に特定の財産を遺したい場合には、遺言書の作成が必須となります。

 

主な遺言書の種類

遺言書には大きく分けて以下の2種類があります。

  • 自筆証書遺言:自分で作成でき、費用がかからないが、形式不備で無効になるリスクがある。自筆証書遺言書保管制度(法務局保管)が2020年7月10日に開始され、紛失・改ざんリスクの低減や検認手続が不要になるなどのメリットがある。
  • 公正証書遺言:公証人が作成するため法的に確実で、原本が公証役場に保管されるため紛失の心配がない。ただし、作成費用がかかる。

 

遺言書がない場合、相続人全員での遺産分割協議が必要となり、意見がまとまらないと長期化する恐れがあります。一方、遺言書があれば、被相続人の意思が明確になるため、相続人間の無用な対立を避けることが可能です。

ただし、遺留分(法定相続人が最低限受け取れる権利)を侵害する内容の場合、後からトラブルになることもあるため、専門家のアドバイスを受けながら作成することが賢明といえます。

✓ポイント:遺言書は被相続人の意思を法的に明確にする最も確実な方法であり、公正証書遺言の作成を検討することで、形式不備や紛失のリスクを回避し、円滑な相続手続きを実現できます。また、遺言は一度作ったからといって変更できないものではありません。後日内容を変えることもできるため、まずは作成することをお勧めしています。

出典:自筆証書遺言書保管制度|法務省 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html

 

ポイント5:遺産分割協議書を正しく作成する

遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、その合意内容を書面化したものが「遺産分割協議書」です。この協議書は、誰がどの財産を相続するかを明文化する法的に重要な書類であり、不動産の名義変更(相続登記)にも必要となります。

令和6年4月1日より相続登記が義務化されました。施行日前に相続を知っていた不動産も対象で、未登記の場合は原則「令和9年3月31日まで」に申請が必要です。正当な理由なく未申請の場合、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。そのため、遺産分割協議書の作成と相続登記は、できるだけ早く進めることが求められます。

遺産分割協議書には以下の内容を記載する必要があります。

  • 被相続人の氏名、死亡日、本籍地
  • 相続人全員の氏名、住所
  • 各財産の詳細(不動産の所在地、地番、面積など)
  • 誰がどの財産を相続するか
  • 相続人全員の実印と印鑑証明書

 

相続登記の申請では、協議書の添付や不動産表示の正確な記載が必要です。特に不動産の記載については、登記簿謄本の通りに正確に記載しないと、相続登記の際に受理されないことがあるため注意が必要です(登記事項と表記一致が重要)。法務局の手引・記載例に沿うと安心です。

✓ポイント:遺産分割協議書は相続登記の必須書類であり、令和6年4月から義務化された相続登記をスムーズに進めるためにも、相続人全員の合意内容を正確に明文化し、早期に作成することが重要です。

出典:相続登記の申請義務化について|法務省 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html

 

ポイント6:共有名義は原則避ける

「とりあえず兄弟で共有にしておこう」という安易な判断は、将来的なトラブルの火種となります。共有名義の不動産は、売却や賃貸、大規模修繕などの意思決定において、共有者全員の同意が必要となるため、後々の活用や処分が非常に困難になるからです。民法では、共有物の変更・処分には共有者全員の同意が必要とされるのが原則で、売却や大規模修繕等が滞るリスクがあります(管理行為は持分価格の過半数で決定)。

たとえば、兄弟3人で実家を共有したとします。数年後、一人が「売却して現金化したい」と考えても、他の二人が反対すれば売却できません。また、共有者の一人が亡くなると、その持分がさらに相続され、共有者が増えて権利関係がより複雑化する悪循環に陥ります。

 

共有名義を避けるための方法
  • 代償分割:一人が不動産を相続し、他の相続人に現金で代償金を支払う
  • 換価分割:不動産を売却し、売却代金を相続人で分配する
  • 現物分割:土地を物理的に分筆して、それぞれが単独所有する

 

どうしても共有名義にせざるを得ない場合でも、将来的な出口戦略(売却時期や方法)について、事前に相続人間で合意しておくことが望ましいといえます。

✓ポイント:共有名義は将来の売却や活用を困難にするため原則避けるべきであり、代償分割や換価分割などの代替手段を検討することで、長期的なトラブルを防止できます。

 

 

ポイント7:代償分割や換価分割を検討する

不動産は物理的に分けられないため、現金や有価証券のように単純に分割することができません。そこで有効なのが、代償分割や換価分割といった方法です。現物分割・代償分割・換価分割は、相続実務で一般に用いられる分割方法で、協議がまとまらない場合は家庭裁判所の調停・審判で決まります。

 

代償分割とは

一人の相続人が不動産を取得し、他の相続人に対して代償金(現金)を支払うことで、実質的に公平な分配を実現する方法です。たとえば、長男が5,000万円の実家を相続し、次男に2,500万円の代償金を支払うといったケースが該当します。

メリット:不動産を残したい相続人がいる場合に有効。

デメリット:代償金を支払う資金力が必要。その不動産の評価額で意見が分かれる事がある。

 

換価分割とは

不動産を売却し、その売却代金を相続人で分配する方法です。誰も不動産を引き継ぐ意思がない場合や、平等に現金で分配したい場合に適しています。

メリット:現金化により公平な分配が容易。

デメリット:売却に時間がかかる場合がある、思い出の不動産を手放すことになる。

 

どちらの方法を選ぶかは、相続人の状況や不動産の性質によって異なります。家族で十分に話し合い、全員が納得できる方法を選択することが大切です。

✓ポイント:代償分割は不動産を残したい場合に、換価分割は現金で公平に分配したい場合に有効であり、相続人の状況や希望に応じて最適な方法を選択することが円満な相続につながります。

出典:遺産分割調停|裁判所 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_12/index.html

 

ポイント8:相続税対策も視野に入れる

不動産相続では、相続税の負担も無視できません。相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人数」で計算されます。たとえば、相続人が3人の場合、基礎控除額は4,800万円となり、遺産総額がこれを超える場合に相続税が課税されます。

 

節税に役立つ主な制度
  • 小規模宅地等の特例:被相続人が居住していた土地について、一定の要件を満たせば、評価額を最大80%減額できる制度。
  • 配偶者の税額軽減:配偶者が相続する財産については、1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額まで相続税がかからない。

 

不動産の相続税評価額は、路線価方式や倍率方式によって算出されます。評価額を正確に把握し、適用可能な特例を活用することで、相続税の負担を大幅に軽減できる場合があります。ただし、制度の適用要件は複雑なため、税理士など専門家に相談することが不可欠です。

✓ポイント:相続税の基礎控除額や小規模宅地等の特例を理解し、早めに税理士に相談することで、合法的に相続税負担を軽減し、より多くの資産を次世代に承継できます。

出典:No.4152 相続税の計算|国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm

 

ポイント9:専門家の活用を検討する

不動産相続は法律、税務、登記といった多岐にわたる専門知識が必要となります。複雑な案件や相続人間で意見が対立している場合は、早めに専門家に相談することがトラブル回避の鍵となります。

 

各専門家の役割
  • 弁護士:遺産分割協議がまとまらない場合や、遺留分侵害額請求などの法的紛争に対応
  • 税理士:相続税の申告、節税対策、財産評価のアドバイス
  • 司法書士:相続登記、遺産分割協議書の作成支援
  • 不動産業者:不動産の査定、売却サポート、有効活用の提案

 

多くの専門家は初回無料相談を実施しているため、相談のハードルは思ったより低いものです。「わからないから専門家に聞く」という姿勢こそが、結果的に時間とコストを節約し、円満な相続を実現する近道といえます。

✓ポイント:弁護士、税理士、司法書士、不動産業者など各専門家の役割を理解し、案件の複雑さに応じて早期に相談することで、法的リスクを回避し、最適な相続方法を見つけることができます。

 

ポイント10:不動産の現状を共有する

相続が発生してから「実は雨漏りがあった」「隣地との境界が不明確だった」といった問題が発覚すると、トラブルの原因となります。不動産に関する正確な情報を事前にまとめておくことが、無用な争いを防ぐ最後のポイントです。

 

共有しておくべき情報
  • 修繕履歴(屋根、外壁、設備など)
  • 境界確定の有無(測量図の有無)
  • 賃貸している場合の契約内容
  • 将来的な利用計画(売却予定、建て替え予定など)
  • 権利関係(抵当権、地役権など)

 

特に境界未確定の土地は、売却や分筆で時間・費用が増すため、筆界特定制度等の活用を検討することが有効です。また、雨漏りやシロアリ被害などの不具合は2020年民法改正で”契約不適合責任”として扱われ、後の紛争化を防ぐためにも情報共有が重要となります。

被相続人が元気なうちに、これらの情報を整理し、相続人全員で共有しておくことで、いざ相続が発生した際に迅速かつ適切な判断を下すことができます。

✓ポイント:修繕履歴、境界、権利関係など不動産の現状を詳細に記録し、相続人全員で事前に共有することで、相続後の予期せぬトラブルを回避し、売却や活用の判断をスムーズに進められます。

出典:筆界特定制度|法務省 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji104.html

 

まとめ

不動産相続のトラブルを未然に防ぐ10のポイントを解説してきました。早期からの準備と家族間でのオープンなコミュニケーションこそが、円満な不動産相続を実現する最大の鍵です。

相続はなかなか話しにくいことではありますが、相続財産は被相続人しか知らないというケースなどもあります。「話し合いにくい」「まだ早い」と先延ばしにせず、被相続人が元気なうちから財産状況や希望を共有し、遺言書の作成や専門家への相談を進めることが重要です。特に佐賀で不動産相続にお悩みの方は、私共をはじめとする地域の専門家に相談することで、地域特有の事情に応じた最適なアドバイスを得られます。

「わからないことは専門家に頼る」という勇気を持つことも、円満相続への大切な一歩です。本記事で紹介した10のポイントを参考に、大切なご家族との関係を守りながら、スムーズな不動産承継を実現してください。

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